雰囲気づくりのための、文脈を意識した声かけ

研修・育成を行うに当たって、新人・後輩に向けて声かけをする場面が出てくると思います。説明途中の理解度確認や、各自で課題を進めているときの状況確認等で。
この記事では、そのようなときに何を意識してどのように声かけするかについて、記載していきます。
声かけにおける考え方・観点
声かけの目的
声かけの目的は、主に下記2つかと思われます。
- 状況確認
- 疑問点や不明点、進捗、困りごと等を確認する。
- 話しやすい・訊きやすい雰囲気づくり
- 状態や困りごと等について、出来るだけ色々な角度でやり取りしやすくする。
このうちの「話しやすい・訊きやすい雰囲気づくり」を、ここでは掘り下げていきます。
文脈を意識しない場合に起こり得ること
話しやすい・訊きやすい雰囲気づくりのためには、どのようなアプローチが考えられるでしょうか?
表情や仕種、目線を合わせる等、様々なものがあるかと思いますが、ここでは文脈に焦点を当てていきます。何の話をしているかの認識合わせ、と言い換えても良いかもしれません。
声かけに対してどのような反応になるかは、声かけ時の文脈に左右されやすいと考えます。文脈を限定し過ぎるとそれ以外の反応がしづらくなり、文脈を設定しなさ過ぎると何と返したら良いかの迷いが生じやすくなると思われます。
- 文脈を限定し過ぎる例
- 「課題、進んでる?」「今の作業で分からないところ、あります?」
- 訊かれたこと以外について話しづらくなる可能性があります。
- 例えば、声をかけられた側が「冷房が効きすぎていて集中出来ない」と思っていても、「今の話とは関係ないから」と考えてそれを言い出せない、ということもあるかもしれません。
- 「課題、進んでる?」「今の作業で分からないところ、あります?」
- 文脈を設定しなさ過ぎる例
- 「調子どう?」「大丈夫?」
- 反応の自由度は上がるものの、何を答えれば良いか分からず、言葉に詰まって反応出来なくなる懸念もあるかと思います。
- 「調子どう?」「大丈夫?」
文脈を意識した声かけ
文脈を限定し過ぎてもしなさ過ぎても、反応のしづらさが起こり得ます。
声かけに正解はありませんが、少しでも反応しやすくするために、工夫の余地はあると考えます。
その工夫とは、複数選択肢の提示です。「AでもBでも、それ以外でも構わないです」というような提示の仕方です。例えば、下記のような形です。
- 「この件について、どう思います? A案についてでもB案についてでも、それ以外で思っていること等あれば教えて欲しいです」
- 「状況いかがです? 進捗、気になるところ、コンディション、それ以外でも、話したいこと、訊きたいこと等あれば・・・・・・」
その時々の場面に応じて声かけの仕方は変わってくるかと思います。複数選択肢の提示をしようとすると、声かけが冗長に感じられる懸念もあります。
ですが、文脈をどの程度限定しているかに意識的になることで、新人・後輩が反応しやすい環境をつくる一助になるのでは、と考えます。
参考情報
文脈を意識した声かけによって、新人・後輩がある程度話しやすくなるかもしれません。ただ、話しやすくなったとしても、そこで話される内容が整理されたものになるとは限りません。
まとまっていない状態で話されるという心構えの方が、聴き手のイライラ等が起きにくく、話しやすい・訊きやすい雰囲気に繋がるのではないでしょうか。そういった考え方を深めるために、下記などが参考になると考えます。
引用:『もう一度カウンセリング入門 心理臨床の「あたりまえ」を再考する』 – 国重浩一[著] – (日本評論社:2021)
第3章 カウンセリングの会話
話し手をどのように見なしているだろうか
すべての人に、話し手としての経験がある。そして多くの人は、自分の悩みや問題について話すときに、それほどうまく話せるような気はしないだろう。それにもかかわらず、自分が聴き手に回ったとたん、相手を実にしっかりとした話し手として見なし、そのように語れると期待してしまう。