短時間のコミュニケーションの時間〜新人が現場に定着しやすくなるための場づくり〜

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チームや部署に新人が入ってきたとき、その人はどれくらいで馴染めるでしょうか? すぐに馴染める人、中々馴染めない人、表面上だけ取り繕っている人など、様々でしょう。周りとコミュニケーションを取ろうとするかどうかも人によって違いそうです。

本記事では、新人が定着しやすくするための場づくりの一例を紹介していきます。筆者の現場で実施してみて、新人を含めたチーム内のメンバー同士が質問や報連相をしやすくするのに、一定の効果があると感じています。

目的・ねらい

場づくりの目的・ねらいは、次の通りです。3つあり、それぞれ相互に関連していると考えています。

  • チームや部署のメンバー同士がやり取りしやすい環境をつくる
  • 互いの考え方・価値観を共有する
  • 新人の不安・ストレスの軽減

新人が入ってきたとき、最初の段階はお互いに様子見ではないでしょうか。どのような考え方・価値観を持っているのか、上手くやっていけるのか、相性は良さそうかといったことを、新人も迎える側も考えているでしょう。

相手の考え方・価値観がある程度わからないと、発言の意図や背景が十分に汲み取れず、すれ違いが起きやすくなったり、言えないことが溜め込まれたりします。それによって不安やストレスが膨らんでいき、気づいたときには休職・退職というようなことにもなりかねません。

そこで、互いの考え方・価値観を共有する場を設けることで、少しでもやり取りしやすい環境につなげていければと考えています。

実施内容

下記3つを予め案内して実施しています。

  • 週1回、15分程度で実施
  • 1グループ3〜4人
  • テーマの設定

現場によりますが、メインの業務以外に余り多くの時間は使えない、ということは多そうです。そんな時間を取る暇があるなら、少しでも業務を進めて欲しい、というように。周りが受け容れてくれること、メンバーの負担を踏まえると、10〜15分程度が落としどころかと思われます。

部署やチームの人数次第ですが、1グループ3〜4人が話すのにちょうど良い人数だと感じます。2人だとプレッシャーがかかりやすくなることもあり、人数が多すぎると話せない人も出てきますので。全部で5人なら1グループ、6人以上なら3〜4人ずつのグループに分けるようにしています。

また、2グループ以上に分けられるなら、メンバーはできるだけ毎回入れ替えることをオススメします。メンバーが1人でも違うと、同じテーマでも話題の展開の仕方が変わってきますので。

テーマは、筆者が毎回事前に設定して当日提示しています。テーマを設定していても、そこから話題が逸れていくこともあります。メンバーが話しやすい話題であれば逸れても構わないと考えていますが、テーマがあることによって話しづらい話題に逸れたときに戻す手段として機能することもあります。

テーマをどのような意図で設定しているかは、後述の「場の設計意図」をご参照ください。

実施時の案内(導入説明)

設定したコミュニケーションの時間を実施するに当たって、事前説明と当日の導入説明をしています。いずれも、メンバーが慣れてきたら状況に応じて省略することもあります。

  • 事前説明
    • 実施日時
    • 「目的・ねらい」の共有
  • 当日の導入説明
    • グランドルール(場に対する枠組み)
    • テーマは「話題の入口」であること

コミュニケーションの時間を実施することが決まったら、事前に案内をしておきます。当日いきなり伝えられると、業務などとの調整が難しいこともあります。事前に案内しておくことで、予定通り参加してもらいやすくなります。

目的・ねらいは、明示しておきます。コミュニケーションの時間に限らず、「○○を実施します」とだけ伝えられても、その目的・背景がわからないと不安になったり参加意欲が出にくくなったりするのではないでしょうか。目的・ねらいを示すことで参加意欲が出るとは限りませんが、納得はしやすくなると思われます。

当日開始前に導入説明をしています。参加メンバーが実施することに慣れてきたら、省略することもあります。導入説明で伝える内容は場についてのグランドルール(場に対する枠組み)とテーマで、具体的には下記です。

  • グランドルール(場に対する枠組み)
    • この場で話してもいいかなと思うことだけ話してください
    • 他の人の話を尊重してください
    • 否定・評価は避けてください
    • 他の人の発言を遮ったり割り込んだりせずにひと区切りまで聴いてください
  • 「テーマ」はあくまで入口です
    • そこから話が逸れても構わないです

グランドルールを提示されると、窮屈に感じるかもしれません。ですが、制限なしで話してもらうと、攻撃的になったり踏みこみすぎたりして、安心して話すことが難しくなる恐れがあります。盛り上がることより、安心して話せる場にすることを重要視しています。

テーマについては、あくまで入口であること、そこから逸れても構わないことを伝えておきます。伝えない場合、自分が話そうとしていることがテーマに沿ったものかという迷いが出たり、他のメンバーに「テーマから外れている」と指摘したりすることが起こりえます。「指摘」は萎縮につながる懸念があるため、できるだけ起きにくくしています。

場の設計意図

全体的な方針

改めて、場づくりの目的・ねらいを確認しておきます。これらに沿いながら、できるだけ安心して話せる場を目指していきます。

  • チームや部署のメンバー同士がやり取りしやすい環境をつくる
  • 互いの考え方・価値観を共有する
  • 新人の不安・ストレスの軽減

時間設定

1回「15分」を設定しています。人によって、たくさん話したい人、話すのが余り得意ではない人と分かれるかと思いますので、そのバランスを考慮しての15分です。

実施タイミングとしては、休憩の直前に設定しています。後ろに延びる余地があると、話を区切るタイミングが難しくなりやすいです。そのため、「休憩時間になりましたよ」という区切る口実が使いやすいように、休憩直前にしています。

テーマ設定

テーマは、大きく次の3つの方針を元に設定しています。

  • 正解がないもの
  • 情報格差が生まれにくいもの
  • プライベートに踏みこまなくても済むもの

「○○という業務について」というような、ある程度の正解があるテーマだと、知っている人が知らない人に教えることで上下関係が生まれやすくなります。そうすると、自分が思っていることがあっても、知らない側だと発言しづらくなるでしょう。

参加メンバーの誰もが正しさを気にせず話しやすくするために、「仕事において大切だと思うこと」のように個々人で価値観・考え方が異なる正解がないものをテーマとして設定するようにしています。

「最近ハマっていること」のような趣味や興味関心の対象をテーマに設定すると、個別具体的なドラマや音楽、動画などが出てくる可能性が高いと考えます。メンバー全員が同じように知っていれば話は弾むでしょうが、知っている人・知らない人で分かれると、知らない人は発言がしづらくなるでしょう。

「何が自分のモチベーションにつながるか」のような自分自身と紐づくテーマだと、他の人から出てくる個別具体的なものを知らなくても、発言に差し支えは起きにくいと考えます。

職場でプライベートな話を出したいかどうかは、人によって違ってくると思われます。気にせず話す人もいれば、仕事にプライベートは持ち込まないという考え方から話題に出したくない人もいるでしょう。そのため、「休日の過ごし方」というようなプライベートに踏みこむ前提のテーマだと、話すことに抵抗感を持つ人もいるかもしれません。

以上を踏まえてテーマを設定すると、「自分と他者で、考え方が違うと感じるとき」のような抽象度が高めのものになりやすいです。このような抽象的なことについて立ち止まったり一歩引いたりして考えてみることは、考える習慣・土台の醸成につながるかもしれません。

参考情報

今回紹介したものをそれぞれの現場に合わせた形で設計・実践するためには、その目的・ねらい・背景を理解することが重要だと考えます。

場づくりを考える上で、『人間関係の学び方: 人間性豊かな関係を育む「ラボラトリー方式の体験学習」の理論と実践』土屋耕治編, 楠本和彦編, 中村和彦編 ナカニシヤ出版 の「7章 対人間プロセス」などが参考になると思われます。

ABOUT ME
部署内の新人・後輩の研修・育成に関わっている会社員です。 セミナーや勉強会、書籍での学びを現場で実践していっています。 このブログでは、実戦経験を含めた学び・気づきについて、情報を発信していきます。
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