日報・ジャーナル

新人・後輩との関係構築のための日報活用法:「返信」「デザイン」の工夫・注意点

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新人・後輩の研修・育成を行うに当たって、日報を活用することがあるかと思います。その際、どのようなことを意識して取り組んでいますでしょうか? ここでは、研修・育成担当者に向けて、筆者のこれまでの経験や学びを踏まえた日報活用時の「返信」「デザイン」の工夫と注意点を記載していきます。

「返信」の工夫は「具体的な場面を書く」「感謝を伝える」「パターンを増やす」の3つで、注意点は「ネガティブフィードバックの書き方」「分量調整」の2つです。

「デザイン」の工夫は「具体的な項目の用意」「公開範囲」「アナログ・デジタルの使い分け」の3つで、注意点は「日報以外の場の活用」「数値化・定量化の活用」の2つです。

日報活用の目的

日報は、あくまで手段です。工夫や注意点の前に、何のために日報を活用するかを確認しておきます。筆者の考える日報活用の目的は、下記3つになります。

  • コミュニケーションの補助
  • 新人・後輩が学んだ内容の理解促進
  • 新人・後輩の状況把握

コミュニケーションの補助

研修や育成におけるコミュニケーションは、口頭やメール(チャット)でのやりとりが基本になるかと思われます。ただ、新人・後輩の理解がその場で全て完結するとは限りません。あとになって、整理できたり疑問が湧いてきたりすることもあるでしょう。

日報は、新人・後輩に自分のタイミングで質問できる機会を提供することにつながります。

新人・後輩が学んだ内容の理解促進

説明を受けたり手を動かして練習したりしても、理解しているとは限りません。理解できているかどうかは、その内容をアウトプットしてみると確認しやすいです。1日の終わりにアウトプットする機会を設けることで、その日学んだ内容の整理・理解につながると思われます。

また、日報は読まれる前提のものです。読んでわかりやすい文章を書こうとすることで、説明の練習にもなるでしょう。

新人・後輩の状況把握

研修や業務の進捗状況確認は、日報以外でも口頭などで行っていると思われます。ただ、忙しさで確認し忘れることもあるでしょう。そのようなときに、日報でも報告してもらうと進捗状況がより把握しやすくなります。

また、日報に書いてもらうことで日々の履歴が残ります。1ヶ月などの長いスパンで状況をふりかえるときに、日々の進捗状況が1箇所にまとまっていると役立つでしょう。

日報への「返信」の工夫と注意点

目的を確認したところで、実際に日報を運用する上での工夫と注意点に話を移していきます。日報は、書いてもらうだけでも一定の効果はありますが、それだけでは不十分です。新人・後輩の研修・育成において、日報活用には返信が不可欠と考えます。

とはいえ、ただ返信をするだけでは、十分活用できているとは言いがたいです。「具体的な場面を書く」「感謝を伝える」「パターンを増やす」の3つの工夫、「ネガティブフィードバックの書き方」「分量調整」の2つの注意点。これらが、日報活用につながると考えます。

工夫その1:具体的な場面を書く

返信では、新人・後輩が行った業務、日報に書いた内容について触れることになると思われます。その際、どれくらい具体的に書くかで伝わりやすさが変わってきます。具体的に書くほど、認識のズレが起きづらくなります。

例えば下記の場合、自分が新人・後輩の立場だったらどのように受け取るでしょうか?

  1. ○○の業務、良かったですよ
  2. ○○の業務、△△のところが特に上手くいっていたと思います
  3. ○○の業務、△△のところでのAさんの■■という取り組みが品質向上につながったと感じています

①の場合、褒められていることはわかります。ですが、具体的に何がどのように良かったのかはわかりません。とりあえず問題はなかったようでひと安心、くらいの受け取りになるのではないでしょうか。

②の場合、業務のどこが上手くいっていたかはわかります。ですが、それが何によって上手くいったかはわかりません。再現性の獲得にはつながりにくいのではないでしょうか。

③の場合、具体的にどの行動が何につながったのかが把握できます。その行動が意図したものだったかはわかりません。ですが、行動と結果のつながりを知ることで、次に同じ行動を取るかどうかが判断しやすくなります

工夫その2:感謝を伝える

筆者は、返信の中で感謝の一文を添えるようにしています。日報の返信は、リアルタイムではなく翌朝に読まれることが多いです。朝一で日報の返信に目を通し、感謝の言葉が入っていたら、今日も頑張ろうと思ってもらえるのではないでしょうか。

評価ではなく感謝であることが大事です。評価は、できたかどうかの基準がおおよそ共有されているため、人によるバラツキは少なめ。言い換えると、評価の返信は誰が書いても大差ないという見方もできます。

一方、感謝は個人差が出ます。何に感謝の気持ちを持つかは、その人の価値観によって違ってくるでしょう。感謝を伝えるということは、貢献してくれているということを伝えるポジティブなメッセージになります。関係構築にもつながるかもしれません。

工夫その3:パターンを増やす

できるだけ、色々なパターンの返信をします。どれだけ素晴らしい返信をしても、同じものが毎日続いたら、段々と響かなくなってきます。「また同じか」と思って、読み飛ばすようになるかもしれません。

パターンを増やすとなると、ハードルが高く感じるかもしれません。色々なパターンといっても、小さな変化で十分と考えます。

  • 表現の変化: ありがとう、助かります、うれしい
  • 視点の変化: 研修・育成担当者視点、同僚視点、お客さん視点
  • 対象の変化: 成果物、行動、発言、周りとの関係性

このような切り口で少しずつ変化をつけてパターンを増やすと、新人・後輩が返信を読むときの楽しみも増えるかもしれません。

注意点その1:ネガティブフィードバックの書き方

ネガティブな内容は、ポジティブなもの以上に具体的に書くようにします。どれくらい具体的かによって、新人・後輩が下記のどのレベルで受け取るかが変わってきます。

  • 行動・発言
  • 能力・経験
  • 人格・価値観

研修・育成を行う上で、客観視や改善を促すためにネガティブフィードバックをする場面もあるかと思います。その際、具体的に書くほど行動・発言レベルで受け取りやすくなるでしょう。

例(具体的):「△△」という表現、○○さんには別の意味で伝わっていたようです。誤解を避けるために、もう少し別の表現を検討してみませんか。

この場合は、表現が見直し対象だと伝わるかと思います。その上で、変えるか変えないかは、フィードバックを受けた新人・後輩の判断になってきます。

逆に、抽象的に書くほど、「能力・経験」「人格・価値観」のように、変えられないところに対するフィードバックとして受け取るリスクが高まります。変えられると感じるなら、改善の意欲につながりやすくなるでしょう。変えられないと感じるなら、自己否定的になったり諦めたりするかもしれません。

例(抽象的):○○さんの仕事ぶりは、周りのモチベーションを下げている。もっと真面目に取り組んで欲しい。

この場合は、読んでも仕事ぶりの何が周りに影響しているかが不明です。見当はつくかもしれませんが、返信を書いた人と受けとる人でズレているかもしれません。認識のズレは、見当外れな改善につながる恐れがあります。

ネガティブフィードバックは、改善のためのもの。そのため、どこが改善点かの認識が合うように、具体的に伝える必要があります。伝わって初めて、どのように対応するかという行動の話に移っていけます。

注意点その2:分量調整

日報に返信を書く際、返信の分量調整にも注意が必要です。特に分量が明らかに少ないときがあったりすると、新人・後輩に「何かまずいところがあったのかな?」と不安を抱かせる恐れがあります。

望ましいのは、文章量のバラツキが少ないこと。ですが、状況・状態によってバラツキは出てきます。その場合に大事なのは、新人・後輩の仕事や日報の内容によるものではないことの共有です。

研修・育成担当者の自己開示。これが分量のバラツキによる不安を軽減させます。分量の多い少ないが不安につながるのは、その理由がわからないからです。理由が自分側にないことがわかれば、不安にはつながりにくくなると思われます。

「忙しくて返信が余り書けなかった」というように状況・状態を共有しておくと、分量のバラツキによる影響を抑えやすくなると考えます。

日報「デザイン」の工夫と注意点

日報は、どのような項目を用意するかによって書かれる内容が変わってきます。「自由に」「何でも」だと、その日の業務を箇条書きにするだけになるかもしれません。日報活用の目的につながるように、日報の枠組みをデザインしていきます。

  • コミュニケーションの補助
  • 新人・後輩が学んだ内容の理解促進
  • 新人・後輩の状況把握

工夫その1:具体的な項目の用意

日報の項目は、日報で何をふりかえって欲しいかを踏まえて設定します。例えば、以下のような感じです。

  • 気持ち・精神状態をふりかえって欲しい
    • 「本日のできごと・行動において、どのような思い・感情がありましたか?」
  • モチベーションアップにつながる要素をふりかえって欲しい
    • 「1日をふりかえって、どのような行動に手応えを感じましたか?」
  • 周りとの関係構築につながる要素をふりかえって欲しい
    • 「1日をふりかえって、誰のどのような行動があなたの助けになりましたか?」

実際に日報を運用してみて、想定通りの内容が書かれるとは限りません。書いてもらった日報を見て、必要に応じて項目の見直しを行います。

筆者は、日報の最後に「その他、何か気づいたこと・感じたことなどあれば」という自由項目も用意しています。用意した項目外のことで、新人・後輩が書きたいことが出てきたときに、書きやすくするためです。

工夫その2:公開範囲

書いてもらう日報、誰に見てもらう想定でしょうか? 下記のように、幾つかの範囲が考えられます。

  • 部署全体に公開されるもの
  • チーム内でのみ共有されるもの
  • 研修・育成担当者しか見ないもの

誰が見る想定かで、新人・後輩が書く内容が変わってきます。公開範囲が拡がるほど、お行儀の良い内容になる印象です。目的に応じて、公開範囲を調整します。

  • 新人・後輩のことを広く知ってもらいたい
    • 部署全体など、できるだけ広い範囲に公開
    • 内容は、無難なものになりがち
    • 前提を知らない人に向けて書くので、説明の練習になる
  • 新人・後輩に、思考や感情など内面を深掘りして欲しい
    • 研修・育成担当者だけなど、できるだけ公開範囲を限定する
    • 状況を把握している人に向けて書くため、踏み込んだ内容になりやすい

工夫その3:アナログ・デジタルの使い分け

日報の媒体は、アナログ・デジタルどちらもありえます。日報を書く新人・後輩がどれくらいパソコンやスマートフォンに慣れているかによって、アナログ・デジタルを使い分けます。

考えていることを表現しやすいかが大事だと考えます。書きたいことがたくさんあっても、タイピングが不慣れだと半分くらいしか書けないかもしれません。字が下手という思いから、手書きだと短く済ませてしまうかもしれません。

  • デジタル
    • パソコンへの慣れが必要(パソコンの準備も必要)
    • 慣れたら、手書きよりも速い
    • 履歴が残りやすい(日報を受けとりやすい)
  • アナログ
    • 準備のハードルが低い(紙とペンがあれば書ける)
    • 手書きへの慣れ具合によって、読みやすさにもバラツキが出る
    • 図や絵など、文字以外の表現がしやすい

筆者は、新人・後輩にパソコンでのタイピングに慣れて欲しいという意図で、デジタルで日報を書いてもらっています。

注意点その1:日報以外の場の活用

日報の運用に慣れてくると、日報に書かれたことには日報への返信で対応しがちです。日報活用の目的の1つは「コミュニケーションの補助」です。必要に応じて、日報以外の場を活用します。

  • 日報への返信で対応
    • ツールの使い方など、手段・方法についての困りごと
    • 自分で考えて欲しくて、ヒントを出すに留めたい場合
  • 日報への返信で完結させず、1on1など話を聴く場を設ける
    • 人間関係での悩み・困りごと
    • 文章だと誤解を招く恐れのあるフィードバックが行うとき

日報以外でやりとりした場合、あとから履歴を残しておくことをオススメします。時間が経って日報を見直したときに履歴がないと、この困りごとが最終的にどうなったのかがわからないからです。

注意点その2:数値化・定量化の活用

変化を見えやすくするため、満足度や修得度などを数値化して日報に書いてもらう場合もあるかと思います。「本日の研修内容の修得度を100点満点で数値化してください」というように。

数値化・定量化は便利です。グラフ化して変化をわかりやすく見せることができます。数値化することで、「何が加点につながっていますか?」のように掘り下げるきっかけにもなります。

数値化・定量化は、わかりやすい形で残ります。残っていると、過去の点数との比較が発生する場合があります。過去との数値の比較は、下記のような掘り下げの妨げが起こりえます。

  • 今日の出来は「90」だ
    • (過去の点数を見て)1週間前はもっと良かったが、そのときは「80」を付けている
    • じゃあ、今日の「90」は高すぎかもしれない、「78」くらいか?
    • 減点要素として、何があるだろうか?

点数は、新人・後輩の主観によるものです。同じくらいの手応えであっても、付ける点数が変わることもあるでしょう。そのような曖昧な過去の点数と比較すると、「今日」「今ここ」のふりかえりに集中しづらくなると思われます

数量化・定量化を行う場合は、過去の点数は気にせずに今日がどうだったかで付けてもらうよう、案内すると「今日」「今ここ」のふりかえりに集中しやすくなると考えます。

ABOUT ME
部署内の新人・後輩の研修・育成に関わっている会社員です。 セミナーや勉強会、書籍での学びを現場で実践していっています。 このブログでは、実戦経験を含めた学び・気づきについて、情報を発信していきます。
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