安定した関係づくりのために、褒めるのではなく勇気づけをする

新人・後輩の行動に対して、どのような対応をしていますか?
良くあるのが「褒める」という対応だと思います。一見、研修・育成の場で推奨される行為だと感じられるかもしれません。確かにメリットもありますが、デメリットも潜んでいます。
ここでは、「褒める」ことのメリット・デメリットを検証し、「勇気づけ」というアプローチについて検討していきます。
褒めることのメリット・デメリット
褒めることのメリット・デメリットを、下記それぞれの視点から検討していきます。
・研修・育成担当者
・新人・後輩
メリット
- 研修・育成担当者側
- 新人・後輩の頑張りや成果を把握・評価していることを伝えられる。
- 褒めることで、一時的に新人・後輩のモチベーションを上げることに繋がる。
- 新人・後輩側
- 褒められることでやる気が出る。
- 自分の行動・成果物が評価されるものだと知れる。
デメリット
- 研修・育成担当者
- 褒めるときと褒めないときの境目を明確にする必要がある。
- 曖昧だと、褒めないことが不安を煽ることに繋がり得る。
- 研修・育成する相手が複数人居る場合、褒めるバランスに気を配る必要がある。
- 1人を褒めることが、他の人を褒めないことに繋がる。
- 褒めるときと褒めないときの境目を明確にする必要がある。
- 新人・後輩側
- 褒められることが目的になる。
- 褒められなかったときのモチベーション低下。
メリットについては、納得・共感しやすいものかと思われます。一方、デメリットについては、疑問に思われるかもしれません。
褒めるという行為は、「凄いね」「よく出来たね」等、相手の言動・行動が主語になるものと考えます。
- 褒めることはしない
- 褒めるときの基準が明確で認知されている
こういうケースは、まだマシかと思います。筆者が1番危ういと考えるのは、下記ケースです。
- 褒めるときの基準が曖昧で、気まぐれに褒める
特に、新人・後輩が明確な価値観・自分軸を持っていない場合、研修・育成担当者の顔色を窺うようになり、疲弊してしまう懸念があります。
筆者の取り組み
筆者の場合、褒めることは基本的にせず、下記のように日々の行動に対して感謝を伝えることをしています。
- 確認して下さり、ありがとうございます。
- ○○について訊いてくれて、助かります。
その際、特に意識しているのは、下記です。
- 質問・報告といった日々の行動に対して実施
- 対象になる新人・後輩の誰に対しても、同程度の頻度で実施
「褒める」ではなく「感謝」だと評価的な意味合いは薄れてくると思われます。ですが、よく出来たとき・上手く行ったときだけ伝えていたのでは、感謝が伝えられなかったときのモチベーション低下に繋がる恐れがあります。
褒めるのではなく「勇気づけ」を
アドラー心理学では、褒めるのではなく「勇気づけ」というアプローチを推奨しています。上記の筆者の取り組みのベースになっているため、少し紹介しておきます。
筆者は、「勇気づけ」を下記のように解釈しています。
- 「Youメッセージ」でなく「Iメッセージ」
- 「あなたメッセージ」「私メッセージ」と表現されることもあります。
- 「Youメッセージ」→評価的。縦関係。
- 「Iメッセージ」→協働的。横関係。
- 日常的に感謝を伝えることで、伝えられた人は自分が認められていると感じられるようになる。
- リアクションがない → 自分の行動がどのように受け取られているか分からない。認識されているかも分からない。
- リアクションがある → 自分の行動が周囲に役立っていると認識出来る。
参考情報
「褒める」と「勇気づけ」ことの違いについては、下記などが参考になるかもしれません。
引用:『勇気づけの方法 アドラー心理学を語る』 – 野田俊作[著] – (創元社:2017)
第1章◉勇気づけの方法
1.勇気づけとは
◆ほめるのではなく勇気づけ
縦関係をなくして勇気づけをしたいならば、初心者は、とにかく「ありがとう」「うれしい」というネタを探しましょう。でもそれが特別な出来事であった場合は、勇気づけになりません。特別な出来事だと、私はこのような特別な人間でなければこの家族に受け入れてもらえない、と相変わらず思いますからね。