認識合わせのために、話の内容を見える化する

研修や育成をする中で、新人・後輩等の話を聴く場面というのはあるかと思います。その際、下記のような困りごとが起こる場合があります。
- 何の話をしたか覚えておらず、ふりかえりが難しい
- 話したことが、意図通りに伝わったか分からない
- 話はしたけど、頭の中はゴチャゴチャしたまま
そのような困りごとを解消するために、ここでは話の内容の見える化について記載していきます。
解決のためのアプローチ
メモを共有する
新人・後輩の話を聴く際、メモを取ることは多いと思われます。ですが、そのメモを本人に見せることは、そう多くはないでしょう。
自分しか見ないメモは、自分のフィルタだけを通したものになりがちです。自分の考えをまとめたり整理したりするのであれば、役立つでしょう。聴いた話のメモとなると、思い込み・勘違いが含まれているかもしれません。
書いたメモを話し手である新人・後輩にも共有することで、下記のようなメリットに繋がると思われます。
- 認識のズレに気づきやすくなる
- 話し手が考えを整理しやすくなる
話した内容に訂正・付け加えがないかを確認してもらう
話が一区切り付いたら、聴きながら書いたメモを新人・後輩にも見てもらいます。
黙読ではなく、メモを一緒に見ながら、聴き手が口頭で確認していきます。メモの内容を聴き手が話すことで、下記のような変化が起こりやすくなると考えます。
- 自分が話したことを客観的に捉えられる
- 自身の考え方について、整理出来る
- 新たな学び・気づきを得る
その際に大事なのは、訂正・付け加えの確認を行うことです。一度文字として見える状態にすると、それが確定したことのように感じられるかもしれません。ここでのメモは確定のものではなく、現在地の確認に過ぎないことを共有しておきます。
改めて話してもらう
訂正・付け加えの確認が一区切り付いたら、改めて新人・後輩に話をしていってもらいます。
現状確認をすることで、最初よりも話し手の頭の中が整理された状態になっていると思われます。その状態で下記のような選択肢を提示し、新人・後輩の選択を尊重して次の展開に移っていきます。
- メモで確認した話について、更に続けていく
- ここまでのメモに更に書き足しながら話を聴いていきます
- 別の話に移っていく
- ひとまず、別のところにメモを書き始めます
- 後から元のメモに合流するかもしれません
- ここで一区切りにする
- 話が整理されたことで、一旦満足することもあり得ます
- その際は無理に引き延ばさずに、その場は一区切りする形になります
メモの条件と具体例
条件
メモを取る際には、次の2点を満たすものをオススメします。
- 文章・単語の位置変更が出来る
- 後でコピー・共有が出来る
位置変更が出来るものを選ぶのは、メモ確認時に話している時点では別だったもの同士の結びつきが起こり得るからです。結びつくもの同士を線で繋ぐなどの方法もありますが、訂正・付け加えを重ねると段々と見づらくなっていく恐れがあります。
後でコピー・共有が出来るものを選ぶのは、話し手である新人・後輩が、後からふりかえりをしやすくするためです。自分1人でふりかえることで気づきが得られることもあります。コピー・共有は、撮影した画像の共有でも済むため、どのようなメモでも満たすことは出来ると思われます。
具体例
上記条件を満たすメモとして、次の3つが挙げられます。
(他にもあるかと思いますが、筆者が使ったことがあるものに限定しています)
- 付箋(手書きでもパソコン上のツールでも)
- マインドマップソフト(MindMeister、Miro等)
- 表計算ソフト(Microsoft Excel、Googleスプレッドシート等)
筆者は主にMindMeisterを使用しています。話を聴く際はパソコン画面上のメモを見せながらで、終わった後はリンクかPDF形式にエクスポートしたものを共有しています。
注意点
メモを取りながら話を聴くと、話し手のペースはゆっくりになりがちです。聴き手がメモを取り終えるまで、話が中断したりするので。
話すスピード > 書くスピード
話し手に余裕がなさそうな状態のときは、まずはメモを取らず、落ち着くまで話を聴くことも検討したいところです。最初からゆっくりしたペースを強いると、更に余裕がなくなる恐れもあります。
メモを取りながらの話は、ある程度気持ちに余裕を持った状態の方が進めやすいと思われます。
また、新人・後輩の話を聴く際、原因や解決への糸口を見つけなければ、という気負いがあるかもしれません。筆者は、話を聴いて現状がある程度整理出来れば、それだけでも場を設けた価値があると考えています。
参考情報
下記は、カウンセリングの文脈で書かれたものですが、職場で新人・後輩の話を聴く際にも参考になると思われます。
引用:『トム・アンデルセン 会話哲学の軌跡 リフレクティング・チームからリフレクティング・プロセスへ』 – トム・アンデルセン[著],矢原隆行[著・訳] – (金剛出版:2022)
第四章 リフレクティング・トークといってもいろいろ これが僕のだ
会話
僕は新たなストーリーや新たな解決を見出すことにこだわらない。そんなことはすべて、人々が自分の言葉と自分の表現を通して物事を見つめる機会を得られれば、自ずと生じるものだ。僕は原因や説明にもこだわらない。